2018.07.03
Kra インタヴュー
思いきった変貌を遂げたほうがインパクトも強いだろうとの判断から、狐の姿になりました。

――7月25日に最新シングル『通りゃんせ』を発売します。そのヴィジュアル姿も衝撃でしたが、まずは、今回の作品を作るに当たっての狙いから教えてください。

景夕 最初に「狐の恰好をしたい」という想いがありまして、それをメンバーに伝えたところから曲制作が始まりました。
なぜ「狐の恰好」だったのか…。9月11日でKraは結成17周年を迎えますが、長く活動を続けているせいか「名前は知ってるけど、これまで機会がなく、まだライブを観たことがない、楽曲を聴いたことがない」という方々も正直たくさんいます。でも、バンドを続けてくうえで、見てもらわないことには何も始まらない。まだKraへ触れたことのない人たちに、「音源に触れたくなったり、ライブへ足を運びたくなる好奇心を刺激したい」。その想いから、「インパクトを残せる外見にしよう」「印象を与えるなら、昔から好きな狐の姿を提示したい」という考えへ至ったことがきっかけでした。

――6月に東名阪を舞台に行ったツアー「Asynmetry Circus」のときから、今の姿をライブで披露し始めました。当時のお客さんたちのリアクションはどうでした?

景夕 一番最初が名古屋公演でのお披露目だったんですけど。普段なら、メンバーが順番にステージへ出ていき、最後に「景夕―!!」という声を聞きながら僕が舞台へ上がるんですけど。あの日は、僕が姿を現したとたん、「えっ!?」と二度見をするようなリアクションが場内のアチコチで起きてました。

靖乃 東名阪それぞれの会場とも、みなさん驚いた顔をしてましたからね。

――狐のメイクは、景夕さんだけなんですね。

靖乃 全員同じメイクをしては意味がないと言いますか、僕ら、狐の集団になりたいわけではないので。むしろ、インパクトを与える意味では、ヴォーカリストのみに絞ったほうが衝撃は増していく。そこから、景夕のみが狐の恰好をしたわけなんです。



今回の作品では、「無理な和狙いは辞めない?」と提案。
                
――先に「狐のヴィジュアルを提示」という話でしたが、楽曲制作面で、景夕さんはどんな要望を持っていたのでしょうか?

景夕 狐のヴィジュアルを出すということは、「和」を前に押し出す形にもなるじゃないですか。そのアイデアをメンバーに投げ、それぞれ自由に解釈したうえで生まれたのが、今回収録した『通りゃんせ』と『放逸』でした。

――今回収録した楽曲を手がけたタイゾさんと結良さんは、景夕さんの言葉をどのように解釈しました?

タイゾ 先に景夕から「和風でいきたい」という話を聞いたとき、「テーマは和だけど、曲調もそのまま和じゃ当たり前過ぎて面白みが減るな」と俺は思いました。Kraがもともと持っている和風な歌のメロディ感を生かしさえすれば、無理に曲の中へ和楽器を入れることなく和な雰囲気は伝わること。そこから、「無理な和狙いは辞めない?」とメンバーへ提案をしました。

――あまりにも、わかりやすく和を強調するのは違うなと。

タイゾ そうなんです。ましてKraは、和をコンセプトにしたバンドではないですからね。

結良 これは、僕に関してはの話になるんですけど。タイゾの話も受け止めつつ、メンバー曰く、僕が作るメロディや曲調には、和の雰囲気が自然と滲み出てくるらしいんですね。だから、とくに和を意識して曲を作ることはありませんでした。あえて狙ったのが、間奏のブリッジとなる部分へおどろおどろしい和な雰囲気を醸しだしたところ。そこくらいですかね、和を意識したのは。

靖乃 和風をコンセプトとして表現しているバンドと同じ土俵に上がって勝負をしたり、ぶつかりあったところで、「なんか違うんじゃないか」という違和感を誰もが覚えてたぶん、2人の解釈は、まさにKraらしい正解だったなと思います。


時の流れが忙しい時代を軸に据えて『通りゃんせ』の歌詞を書きました。

――『通りゃんせ』『放逸』ともに、歌詞に書きたい想いは最初から見えていたのでしょうか?

景夕 大まかな流れはあったんですけど。楽曲を聴き、歌詞に込めたい想いと曲調とを摺り合わせたうえで生まれた気持ちを、それぞれの歌詞に書きました。

――『通りゃんせ』には、壮大な時の流れを描写していません?

景夕 そうなんです。楽曲を聴いたときに疾走感を覚えたので、それをどういう風に考えていた設定に寄せようかと思ったとき、時代背景の移り変わり、中でも平安鎌倉時代や大正時代など、時の流れが忙しい時代と今を軸に据え、『通りゃんせ』の歌詞を書きました。

――そんな昔の時代からのことを設定に組み込んでいたとは…。

景夕 明確な時代背景はないのですが、頭の中では鎌倉時代や室町時代など、その辺からのことを想い浮かべていました。理由は、その時代の頃から、ずっと狐の存在が語り継がれているからなんです。言葉使いも、あまり古さを覚えることなく。でも、新しくもなくという表現をちょいちょい用いたように、『通りゃんせ』の歌詞には、普段あまり使わない言葉も入れてます。

――『通りゃんせ』の歌詞は、時の流れの中にいる主人公の姿や心境を、主観と俯瞰両方の視点で見ながら書いていません?

景夕 『通りゃんせ』も『放逸』も、「自分の想いはこうありつつ、こうしたらこうなっちゃうのもわかるんだけど。でも、それが性分だからしょうがないよね」と、自分のことなのに俯瞰で見ている感覚で歌詞を書きました。

――『通りゃんせ』『放逸』ともに、歌詞の中へさりげなく狐が登場します。

景夕 "狐感"を出すうえで無理にやり過ぎるとチープになるかなと思って。なので、『放逸』ではおどろおどろしい落としどころにのみ”狐感”を入れたりなど、細かな部分にしか狐の存在は匂わせないように表現をしています。

――歌詞の統一性も考えていたことだったのでしょうか?

景夕 そこは考えてました。やはり、この恰好で出るインパクトも強いだろうし。新作を2曲収録するうえで、リード曲だけヴィジュアル姿の狐と繋がってますとなるよりは…と考え、今回は2曲の歌詞とも狐を表現の軸に据えようと決めました。

靖乃 せっかく狐のヴィジュアルをしてるのに、別の曲で狸の歌を歌うのは違うだろうという感覚みたいなことなんです。