2022.03.17
AKARA インタビュー
1月に会場/通販リリース作品第一弾として発売した「BERSERKER/GUILTY」に続き、3月21日に下北沢 ReGを舞台に行うMIKIKOの生誕祭イベント『My faith…』より、第二弾作品「Chronicle/DEAD OR ALIVE」の会場/通販による販売がスタートする。今年に入り、立て続けに作品をリリースしているAKARAだが、どれも2年前には完成していた作品だと言う。その理由を探ったところ、コロナ禍に翻弄されたAKARAの姿が浮き上がってきた。
――1月に行ったTommyさんの生誕祭ライブより、会場/通販リリース作品第一弾として「BERSERKER/GUILTY」を発売。3月21日に下北沢 ReGを舞台に行うMIKIKOさんの生誕祭イベント『My faith…』から、第二弾作品「Chronicle/DEAD OR ALIVE」を販売します。この2作品に収録した楽曲たちは、すでに2年前には生まれていた曲たちだとお聞きしました。
MIKIKO その通りです。当初は、2年前に1枚のアルバムとしてまとめあげ、それを手にジャーデビューを行うはずでした。そのために、2020年2月に行ったわたしの生誕祭のときに「アルバムを発売する形で、メジャーデビューが決まりました」とみなさんの前で嬉しい発表をし、近いうちに告知するデビュー日に向け、4月以降からはリリースに伴うTOWER RECORDS TOURなど、様々なインストアイベントを組み立てていました。だけど、それがすべて中止せざるを得なくなりました。
――それは、コロナ禍の影響?
MIKIKO その通りです。4月に発令された緊急事態宣言により、すべてのインストアイベントがなくなり、メジャーデビューへの道筋も一度白紙へ戻すことになりました。しかも、重なるときは重なるもので、私たちをメジャーへ引き上げてくださった方が、コロナ禍によってレコード会社を退社することになりました。
あの時期は、他のアーティストさんもそうでしたが、予定していたライブスケジュールがことごとく延期や中止になり、表立って活動していくのもままならない状況へ陥りました。たとえリリースは難しくとも、バンドの歩みは止めてなるものかと、AKARAも表だったライブ活動ができないぶん、無観客でのライブ配信やYouTubeを通して歩み続ける姿を見せ続けてきました。
――AKARAも、数多く制限された環境の中、少しでも前へ進む努力を続けてきたわけだ。
MIKIKO とにかく、歩みを止めたくはなかったんです。その後、いろいろと制限された環境でしたが、ライブハウスも少しずつ動き始め、それに伴い、いろんなバンドさんたちが模索しながらもライブ活動を再開し始めました。もちろんAKARAも、限られた人数しか集客できない環境の中や、いつ、ふたたび中止や延期になるのかわからない不安を抱える中でライブ活動を再開しました。
少し裏話的な話にはなりますが、コロナ禍以前のAKARAは、ワンマン公演で450人は動員できる規模の環境を作りあげてきました。でも、コロナ禍以降、もし以前の動員でワンマン公演を行うとなったら、規模に応じた会場の制限人数という規制もあることから、倍以上の会場を借りて行わざるを得ない状況になりました。会場の規模が上がれば、その分の料金も上がるわけですよね。本来1000人がキャパシティの会場なのに、コロナ禍以降は500人どころか400人が制限の限界だったりもするわけです。そうなると、これまでと同じ価格設定をしていては、たとえ400人入っても赤字になる。じゃあ、その分をお客さんに負担させるのか…という選択肢は、私たちにはありませんでした。
――ということは、ライブの規模も縮小せざるを得なかった。
MIKIKO そうなんです。当時は、安定的な活動が見込めないことや、動くだけ(金銭的な)負担が増すことから「やめる」という選択肢を選ぶ人たちも相応にいました。私たちもあの時期は、楽器を手に電車移動しているだけで白い目で見られるような環境だったこと。動けば動くほど負担が増えるというライブ環境もあり、精神的に追い詰められてしまっていた時期も、正直ありました。ましてAKARAの場合、デビューの話を一度白紙に戻し、これからどうするかと先行きが見えない状況下にもありました。
TAKA 正直、「辞める」という選択肢を選ぶことが、目の前へ次々と降りかかる難題を遠ざけるうえで一番楽な選択肢なのはわかっていました。そのときに「もう辞めよう」と言って難題を退け、二度と音楽活動を行わないのなら、その選択肢もあるのは納得ですけど。たとえコロナ禍は過ぎても、コロナ自体はなくならない今の世の中に於いて、ふたたび音楽活動を始めるのは、コロナ禍前と較べたらそうとう大変なこと。
今もそうですが、いくらライブハウスは安全だからと言っても、会社や学校から「行ってはいけない」と言われてる人たちやライブに足を運ぶことへ二の足を踏んでいる人たちがたくさんいる。今、ライブハウスを支えてくれている音楽ファンたちだって、好きなバンドが頑張っていれば応援しますけど。そのバンドやアーティストが活動を止めたら、音楽という心の支えを他の趣味に向けてしまうのも当然だと思います。もちろん、過去に応援していたバンドやアーティストが復活したり、形を変えて活動を再開したら、ふたたび支持してくれる人たちもいるとは思います。でも、大半の方々は、自分が目の前で心許し、夢中になっている事を支持してゆくのは当然のこと。今の環境の中、改めて1から作り上げていく大変さもわかっているからこそ、僕らは安易に投げだしたくはなかった。
もちろん、それだけじゃないです。せっかくデビューをするために作り上げた音楽の魂(曲)たちがあるのに、それを世の中へ届けずに終えるなんてことは絶対にしたくなかった。だからこそ、それが何時になるのかはわからなかったけど、AKARAとして生きることを僕らは辞めたくなかった。それがメンバー全員の総意だったからこそ、今も、こうして走り続けているわけです。
――今へ、至るまでにもいろんなことがあったんですね。
MIKIKO 自分たちの魂を注ぎ込んだ音源を見捨てる選択肢は、私たちにはありませんでした。だからこそ、時間がかかってでもAKARAを信じてくれる人たちの元へ届けたくて環境を整えてきたし、歳月を擁したとはいえ、ようやく今のリリースの形にまで進むことができたわけなんです。
Tommy 1月にリリースしたシングルに収録した『GUILTY』というインスト曲は、2年前に行うはずだったTAKAの生誕祭で披露する予定でした。でも、その生誕祭自体が、2020年2021年と2年連続でコロナ禍により中止になり、完成しながらもずっとお披露目をする機会を失っていました。だからこそ、わたしの生誕祭を通してですが、ようやくみなさんの前で「GUILTY」をお披露目し、作品としてリリースできたことはもう言葉では言い尽くしがたいほどの想いがありました。
TAKA 僕なんか、そこへ至るまでのいろんな想いがあふれすぎて涙が止まらなくなり、涙を零しながら演奏していましたからね。
MIKIKO その気持ちはすごくわかります。今は、2年前。下手すれば3年前には作りあげていた曲たちを少しずつ作品としてリリースできるようになりましたけど。あの頃の曲を歌うたびに、いろんな思い出がそこへ重なりだすし、そうなるのも仕方のないことだと思います。
まして、今回の作品のタイトルが、"歴史・物語を刻む"という意味を持つ「Chronicle」。当時は、デビューという大きな節目を迎えるにあたって、それまでのAKARAとしての歩みを振り返りながら、そこへ死ぬことないヴァンパイアの生き長らえてゆく姿や、好きな人さえ首筋を噛むことで同じ宿命に巻き込んでしまうかも知れないという、ファンタジックな要素も加味したうえで書きました。「DEAD OR ALIVE」も、誰だって生きるか死ぬかくらいの覚悟を背負った経験があるだろうという思いで書いた歌でした。
TAKA だけど、コロナ禍以降の経験によって、そこへ思っていたのとは異なる新たな解釈が加わったからね。でも、時代の息吹を吸って意味を深めていくのが「歌」なんですよね。
MIKIKO そうやって意味を膨らませた歌を届けることが、どんな状況下に置かれようと歌うことを止めない信念こそが今のAKARAを突き動かす力になっています。3月21日に下北沢 ReGで行うわたしの生誕祭イベントのタイトルへ『My faith…』 と名付けたのも、「My faith=信念」という意味を示すため。その信念を示した「Chronicle/DEAD OR ALIVE」だからこそ、この作品を、この日に届けたかったんです。
――なるほど、納得です。一つ前の作品の話に遡りますが、日本語を大切にしているAKARAの中、「BERSERKER」はほぼ英詞でしたよね。そこには、どんな意味があったのかも気になります。
MIKIKO これも皮肉な話になってしまいますが、AKARAは2018年よりフランスで行われているJAPAN EXPOに毎年出場してきました。その実績を積み上げてゆく中、2020年にAKARAはメインステージに立ってライブを行うことが決まっていました。そのときに、みんなで一緒に声を張り上げ、共に歌える楽曲をということで、サビの英詞もわかりやすく、しかも繰り返して一緒に歌えるようにと作ったのが「BERSERKER」。つまり、海外のフェスティバルライブの中、みんなで一体化した熱狂を作りあげるために書いた歌でした。
2021年にもAKARAは、海外で行われるフェスティバルのメインアクトとして立つことも決定していました。でも、すべてコロナ禍によって中止になれば、今も海外へ渡航することはできません。
もう一つ言うなら、わたしは2月が誕生日だから、生誕祭を行うなら本来は2月に行うわけですけど。それを今年は3月21日に延期したのも、当初の予定では、2月は海外ツアーをする予定があったからなんです。結局は、それもコロナ禍によって中止になりました。今も、6月と8月に海外のフェスティバルへ参加することで動いていますが、今年はコロナ禍のみならず欧州も揺るがす戦争が起きていることから、おそらくその話も難しくなりそうです。
――AKARAの場合、ことごとく災難に振り回されていますよね。
MIKIKO そうなんです。今も世界進出を断念はしていませんけど、今の時期はまだ難しさを覚えています。
――国内でも、ライブハウスでライブを行ううえでも、人数制限や声出し禁止などまだまだ制約が多い環境ですよね。そんな中、AKARAと愛沢絢夏が手を組み、「AKARAZAWA」と題した仙台と福島を舞台にした定期イベントも開催しています。あのイベントも、ライブハウスの活性化の一助になっていますよね。
TAKA コロナ禍以降、ライブハウスにお客さんが足を運びにくくなった環境は、場所によってその動きは顕著にあります。ならば、自分たちが動くことで少しでもその地域を活性化しようという想いから、福島生まれで仙台で音楽活動を始めた愛沢絢夏さんや、彼女を支えるチームの中に仙台出身の方がいること。MIKIKOの父親が福島県出身というご縁もあり、お互い「出身や縁あるライブハウスも盛り上げたい」想いで共感しあえたことから、毎月、郡山と仙台を舞台に共同で「AKARAZAWA」と題したイベントを行おうと、昨年10月から始めました。
Tommy 今は、そこに東京も加えながら毎月行っています。継続し続けることでの認知度や支持、動員も上がってはきましたけど。正直、今もコロナ禍による世の中の制約によっての影響から動員面で厳しくならざるを得ないことがあるのも実情です。
MIKIKO 正直、どこでイベントを企画しようと、行えば行うほど主催者側の負担が増える環境が今も変わらずにあるのが正直なところです。だけど、それを止めてしまったら、バンドやアーティストも、ライブハウスも、お客さんも遠ざかってしまう。3月21日に行うイベント『My faith…』に集まってくれたのは、AKARAと同じ志を持ってコロナ禍以降も活動を止めることなく続けている人たち。こういう仲間たちがいる限り、たとえどんなに厳しい状況下へいようとも歩みは止めません。
嬉しいのが、今回の出演者たちを発表したときに、ファンたちの中から「好きな人たちばかり。ずっと騒ぎっぱなしで体力持たないかも」という声を多くいただいていることなんです。そうやって、特定のバンドやアーティストがじゃなく、すべての出演者たちのライブを楽しみにしてくれるのってすごく嬉しいこと。私たちも、その気持ちで組んだイベントだからこそ、全部楽しんでくれたら嬉しいです。
――3月21日のイベントも楽しみにしています。この日のイベントタイトルへ『My faith…』(信念)と名付けたように、ここからAKARAは、より積極的に攻めていく意識でいるわけですよね。
MIKIKO もちろんです。今年は「AKARZAWA」を筆頭にいろんなイベントへも積極的に出演すれば、ワンマン公演も行えたらいいなと思っています。もちろんリリース活動も、まだ手元に楽曲はあるように第三弾第四弾と続けていく気持ちでいます。今は会場限定と通販のみという形だけに、ライブに足を運ぶのは難しいけど…という方々のために、そんな遠くない時期にはサブスクを通して新作たちを届けようとも準備しています。
今年は、ライブに、リリースにと、信念を持って積極的に攻めていきます。ぜひ、これからの展開も楽しみにしていてください。
PHOTO: 三浦真琴(maco)
TEXT:長澤智典
ライブスケジュール
・3/19(土) 郡山 PEAK ACTION
・3/20(日) 仙台 space Zero
・3/21 (月祝) 下北沢ReG MIKIKO生誕祭
・4/1 (金) 新宿ClubSCIENCE
・4/16 (土) 渋谷GUILTY
・4/23 (土) 郡山PEAK ACTION
・4/24 (日) 仙台SPACE ZERO
・5/4 (水祝) 名古屋
・5/5 (木祝) 名古屋
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