2022.12.08
おおた祭り NEWS
11月19日(土)、横浜BAY HALLを舞台に太田家主催によるイベント「おおた祭り-歌の豊穣祭-」が行われた。出演したのが、太田家、THE BOOGIE JACK、ザ・マスミサイル、GEEKS、花男、南松本高校パンクロック同好会の6組。この日のライブの模様をお伝えしたい。
ガールズフィスト!!!! GT 南松本高校パンクロック同好会
イベントのトップを飾って登場したのが、ガールズフィスト!!!! GT 南松本高校パンクロック同好会。ライブはシャム69のカバー曲『IIF N THE KIDS ARE UNITED』からスタート。彼女たちが歌うと、エネルギッシュな高揚歌パンクアンセムが、い良い意味で晴れた爽やかな表情を持った楽曲として見えてくる。彼女たち自身が天真爛漫でピュアなハートを持っている──。その心の色が、そのまま楽曲にも投影されていた。南松本高校パンクロック同好会の場合、他のカバー曲も含め、どの楽曲も親しみやすく愛らしい色に染め上げる。そこが、彼女たちの強みだ。
続く『Tic×Tic=Tac♪』では、メンバーらの「Tic×Tic=Tac♪~~」の声に合わせ、フロア中の人たちがポゴダンスしてゆく。メンバー同士どうしで身体を寄り添え寄せ合い歌うなど、彼女たち自身がステージの上で弾けることを楽しんでいた。その楽しさがフロア中に広がるからこそ、たくさんの人たちがずっと飛び跳ね続けていた。
声優リアルバンドらしく、MCでは、それぞれが演じているキャラクターに成りきってトーク。しかも、しっかり落ちも用意していたのも流石だ。
『さよなら MY LONELINESS』は、『ガールズフィスト!!!! GT』の漫画(ドラマCD)の作中(第9話)にでも登場し、CDもリリースさ使用しれたた楽曲。登場人物の心情を描いた歌という理由もあり、シンプルな演奏の上で、歌をしっかり届ける形をと取っていた。間奏で、ヒロインの心情をセリフのように語る場面も印象的だ。登場人物の心の揺れが、楽曲を通してリアルに伝わってきたのもうれ嬉しかった。
そして荒々しくギターをか掻き鳴らすのを合図に飛び出したのが、ザ・ルースターズの『恋をしようよ』。アッパーでパンキッシュなロックンロールナンバーに刺激を受け、気持ちがガンガン上がり出だす。後半に向け、めちゃくちゃテンションを上げてゆく楽曲だ。このまま南松本高校パンクロック同好会と一緒に、熱狂に包まれながら騒ぎ続けようか。
最後に南松本高校パンクロック同好会は、オリジナル曲『青春ガール』を演奏。タイトル通り、メンバー自身が眩しい青春の景色をこの空間に作り上げ、ここにいる人たちを、何も怖いものなどなかった無邪気で無敵な10代の少年少女に変えていった。高ぶる気持ちを青空に向かってぶつけるように、メンバーみんな全員ではしゃいでいた。25分という短い時間の中とはいえ、南松本高校パンクロック同好会らしい眩しくて爽やかな青春ロックな姿を、彼女たちは描き出だしていった。観客たちと一緒に飛び跳ねる姿も含め、その楽しさはしっかりと伝わってきた。
GEEKS
スケートボードに乗って,坂道を一気に滑り下りる気分だ。疾走する『SUICIDAL STAR』に刺激を受け、胸が熱く高ぶりだす。エモい。そう、エモいという言葉を彼らにぶつけたくなるくらい高揚する熱い気持ちを抑えられない。この勢いのまま、ズッと熱狂にまみれて騒ぎ続けたい。
演奏は、止まることなく『LASS FORK』へ。さらに勢いを増すように、楽曲は熱を抱いたまま駆け続ける。エンドウ.の歌に掛け合い、ときにハモるメンバーたちとの歌のやりとりも気持ちを燃えさせる。共に声を張り上げ叫びたい。それが出来ないジレンマを、フロアにいる人たちは拳を突き上げ、身体を揺らすことでメンバーらにぶつけていた。
GEEKSも、太田家のイベントではお馴染みの人たち。自分たちは「ガールズフィスト!!!!GT」に登場するバンドだとホラを吹き、みずからを「ホンモノの青春パンクバンド」と皮肉るように口にしていくのも最高じゃないか。
『ARISTO QUEEN』は、重厚なバイキングビートに乗って、フロア中の人たちの気持ちを熱い高揚へと導きだす。最高にワイルドで雄々しい北欧系バイキングロックナンバーだ。勇壮な戦士(猛者)たちが、高ぶる気持ちを胸に雄々しく突き進む。そんなワイルドサイドを歩く姿が見えてきた。
続く『MINX MELANCHOLIA』も、バグパイプの音色も印象深い勇壮でダンサブルなアイリッシュ系のロックナンバー。この曲でも勇壮な声を張り上げ、この会場を、豪傑共が繰り広げる豪快なパーティー空間へ染め上げていった。その豪快な音のバトルが、嬉しく気持ちを騒がせる。
後半は、心地好く疾走するロックナンバー『DECREPIT BUS』に気持ちを預け、フロア中の人たちが身体を揺らしていた。重くエナジーに満ちた楽曲も心を熱くさせるが、滑るよう軽快に走る曲もとても心地好い。
演奏は、激しさと速度を一気に上げだした。GEEKSは『新世界論』を通し、ロックンロールの衝動とも言える、胸をスカッとする歌と演奏を届けてきた。身体がウズウズして、ジッとなどしてられない。軽快に疾走する楽曲に身を預け、このまま頭をカラッポにはしゃぎ続けていたい。
最後にGEEKSは、豪快な音を叩きつけた最高にHOTでアッパーな『JAILBREAK』を演奏。この会場を、荒ぶるロックンロールな宴の場に染め上げていった。フロア中の人たちが大きく腕を振り上げ、その熱を思いきり吸収してゆく。その一体化した景色がイカすじゃないか。
THE BOOGIE JACK
前回は配信ライブでの出演となったTHE BOOGIE JACKだったが、今回はしっかり会場に足を運んでの参戦。それが嬉しい。ライブは、ヒライシュンタが熱い歌声を響かせる『STARRY ROAD』から幕を開けた。彼らは、最初から熱いビートの効いたロックンロールナンバーをガツガツとぶち込んできた。演奏は激しいのに、ヒライシュンタの歌声が気持ちをエモく高ぶらせる。彼が放つ言葉のひと言ひと言が、心に勇気という力を与えてゆく。だから、胸が高ぶる。そういう赤々とした気持ちに心を染め上げてくれるのがTHE BOOGIE JACKだ。
演奏は止まることなく、『宝人』へ。楽曲はさらにテンポを上げれば、演奏もエナジーをアップ。パンキッシュ?確かにパンキッシュだろう。それ以上に、気持ちを熱く揺さぶる魂のロックンロールを彼らは伝えていた。とても青々とした青春の心模様の見える楽曲だ。でも、その青臭い気持ちを全力でぶつけてゆくからこそ、胸が熱く騒ぎ続けていた。
「旅を続ける仲間のバンドマンのことを歌った曲を歌います」の言葉に続いて演奏したのが『イッツオーライ!』。ノンストップで続くライブは、いろんな人生模様を立て続けに突きつけてゆくようにも見えていた。THE BOOGIE JACKは格好などつけられない、不器用で真っ直ぐな生き方しか出来ない連中だ。だからこそ、本心を、本気の言葉を、歌声と演奏に真っ直ぐぶつけてゆく。その思いが、熱々としているからこそ、嬉しいくらいに心が騒ぎ続ける。
もう直接声の届かない人に向けて歌ったのが、『彼方のラブソング』。ヒライシュンタの書く歌は、どれも"生きている"。どの曲も、みずからの経験を反映しているからこそ、言葉の一つ一つが命を宿している。その思いを演奏陣が汲み取り、ざらついた音楽に乗せ、いろんな感情の洋服を着せてゆく。身体を揺らしながらも、『彼方のラブソング』にしっかり耳を傾ける人たちがフロアのアチコチにいた。中には、瞼を濡らしながら拳を振り上げていた人もいただろうか。熱いのに心を泣かせるって最高じゃない。
バラードの『Today』では、ヒライシュンタもアコギを手に演奏に参加。言葉が、思いが、歌声がジンワリと胸に染み渡る。ヒライシュンタの声に思いを重ねるように歌う野津秀雄やYoppeの声も、嬉しく気持ちを膨らませていった。どの曲でもそうだが、不思議と『Today』では、ヒライシュンタの歌う思いのその先の景色を追いかけるように見ていた。いろんな思いや想像を膨らませる歌や演奏だ。てのひらでつかめそうなのに、両手からいっぱい思いが零れ落ちる。
何度耳にしても、何回触れても、やっぱり熱くなるんだよ。とてもロマンチックな歌だと思う。けっして綺麗なロマンチックさではない。不器用で照れ屋な一人の男の愛しい人への思いが、ゴツゴツとした言葉として響いてくる。だから、『クレーターストーリー』が好きなんだ。無骨な男が本気で気持ちをぶつけた思いほど、心を揺さぶるものはない。聞くたびに、いつも新鮮にその思いを受け止め、心がキュッと鳴る。
最後にTHE BOOGIE JACKは『オーイェイ』を演奏。理屈も屁理屈も必要ない。ただ、沸き立つ気持ちのまま、彼らと一緒に「オーイエイ」と叫べばいい。でも、まだ世間はそれを許してはくれない。そんな糞ったれな環境が消え去ったときこそ、一緒に全力で声を張り上げ「オーイェイ」と叫んでほしい。それが、彼らと僕らを一番熱く繋げる言葉なのだから。
ザ・マスミサイル
「みんなで遊ぼうぜ」の声を合図に、ザ・マスミサイルは『チーム』を演奏。コロナ禍も含め、いろんな苦難の山道を何度も乗り越え、彼らは走り続けてきた。そこにはつねに、彼らの元に集うたくさんの仲間たちがいた。ザ・マスミサイルというリーダーにそれぞれの夢を乗せ、ずっと一緒に走り続けてきた。それはファンたちだけではない。ライブハウスという空間の中で一緒に走り続けてきた戦友たちも、そう。今回のイベントも、出演者全員が揃うことが出来なかったという望まない形でのイベントを行わざるを得なかったからこそ、そのリベンジとして催した内容だ。そんな大好きで、大切なチームの仲間が揃った日だからこそ、最初に『チーム』に触れられたのが嬉しかった。さぁ、最高の風を起こそうぜ。
すべての保育園児と、そのまわりの大人たちに届けた新曲が『スギノコ』。負けるな、負けたくないと言っても、けっして100%勝ち続けることはない。誰だって、かならず負けを知ることはある。彼らは歌っていた、昨日の自分に負けるなと。そう、つねに自分の心に勝ち続けていれば、自分を強くしていける。人は、とてもシンプルな思いほど小難しく考えれば、そこへ理屈や屁理屈をつけたがる。だからこそ、そういうときにザ・マスミサイルの歌に触れればいい。こうやって、シンプルな、真っ直ぐな答えを彼らは伝えてくれるはずだ。
『おっ讃歌』では、フロア中から、拳を突き上げ張り上げる声が響いていた。高木芳基の突き上げる拳に合わせ、フロアのあちこちで高く拳が突き上がる。それは、俺も、わたしもそうだよと共感を示す拳。高木芳基が「終わっちゃねぇーだろ」と歌う声に、フロアのあちこちで拳を振り上げ跳ねる人たちがいた。気持ちが動き続ければ、何も終わることなんてない。おっさんやおばさんになっても、物語は描き始められる。青春にゴールはない。人生に深みを覚えたうえで青春を過ごすほど、格好いいことはない。
ミドルメロウな演奏が胸をキュッと鳴らす。手紙を読むように、高木芳基は『拝啓』に乗せ、今の自分の素直な思いや現状を語っていた。『拝啓』は、高木芳基が両親に向けて伝えた歌。でも、その経験がいろんな人に重なるからこそ、いろんな言葉の欠片が、心にグサグサと突き刺さり、熱い血(思い)で心を染め上げていった。
『教科書』。何時になっても、幾つになっても、この教科書は生きる意味を問いかけ、生きることを決意した心の背中を押してゆく。学校の教材で使う答えを記した教科書なんかじゃない。どれも疑問符だ。いや、きっと答えは記している。だけどそれは、受け止めた人それぞれに違う答えを示す国語や道徳のような教科書だ。だから『教科書』に触れるたび、いつもいろんな感情が心に押し寄せる。そんな教科書を開きたくて、ザ・マスミサイルのライブに足を運びたくなる。長年この教科書を開いている人たちが多いのも、それが理由だろう。人生の教科書??そう決めるのは、受け止めた人次第だ。
最後にザ・マスミサイルは『ハンドオンザラン』を力強く突きつけ、たくさんの拳の突き上げる景色を、この場に作りあげていった。突き上がったその拳には、きっといろんな思いが握られていた。それが感謝でも、共感でも、何でもいい。ただ、心が強く動いたから、思いを握った拳を突き上げていたかった。ただ、それだけだ。
花男
アコギを手に舞台に登場した花男。本当に嬉しい表情を浮かべながら、花男は、今の思いを語ったうえでライブを幕開けた。ライブに行きたかったけど行けなかった人のことを歌にしたのが、1曲目を飾った『銀河』。それは、まさにこの日の花男自身の姿にも重なる。いや、それ以前から花男は、地元の小樽市に住みながら、行きたくても行けない悔しさを何度も経験してきた。同じ思いをしてきた演者やファンたちの気持ちも、彼は、同じ目線で何度も体験してきた。だからこそ花男は、いろんな思いをぐっと飲み込み、みんなと同じ目線で、その思いを優しい歌声に乗せ、届けていた。
「お願い忘れないで~」と力強く声を張り上げ、花男は『ライブハウス』を歌っていた。音楽に心を揺さぶられ、救われた人たちが、こうやってライブハウスという空間に集まっている。でも、花男は「この歌たちはみんなに会いたかった」と歌っていた。音楽がみんなの心を抱きしめてくれるのなら、舞台の上から解き放たれた歌たちも、ここに足を運んだ人たちみんなに抱きしめられたくて、みんなに会いたくて、この空間から声を張り上げていた。ライブハウス、とても愛おしい最高の空間じゃないか。
『カレーラーメン』は、2人の子供が幼稚園に行き、夫婦二人きりになったとき、昔を思い出すようにラーメン屋に足を運んだときの様子や心情を歌った楽曲。当たり前の日常を綴った歌だ。でも、一つ一つの言葉から、花男が日々の生活を通して感じているシミジミとした優しい思いがスープのように滲み出ていた。そんな、ほっこりとした歌に、しばし、ほっこりとしていた。
みんなのことを少しでも照らせるようにと、花男は太陽族の『裸電球』を歌いだした。この日の仲間たちと再会できたのも、太陽族というバンドを通し、共に毎日を必死に生き続けてきたからだ。でも花男は、それを懐かしむのではなく、今の自分の生き方と重なるこの曲を選び、言葉のパンチを繰り出すように強い意志を持って歌っていた。花男は、今も戦っている。ここに集った仲間たちも、みんな戦っている。 花男は、みんなにも向けて。そして、自分自身にも向けて言葉を突きつけていた。その言葉に花男はいつも気持ちを奮い立てる。だから、こうやって今も力強く生きている。
フロアにいる観客たちと一緒に「いえーい」と声を張り上げ、気持ちを交わすように花男は『YOU』を歌っていた。花男は、フロアにいる人たちの姿を真っ直ぐに見つめ、気持ち揺れるままに歌声を響かせていた。魂の声??そんな格好つけたものじゃない。ただただ、素直に胸の奥から生まれる思いを、そのまんま花男は自分の喉と身体を震わせ届けていただけだ。でも、その思いに涙腺緩む笑顔が生まれる。そんな素敵な歌に、心が共鳴していたんだよ。
最後に花男は、自分の描いてきた人生のページをめくり返し、そして、また新たなページをめくるように『 ページ』を歌っていた。花男は今の自分になるために、挫折も含めたいろんな人生の道のりを歩いてきた。変わらぬ思いや生き方、新たに選んだ生き方。どれも、今現在や、これからの自分を作るうえで必要な、真っ白なページに書き綴った姿や思いだ。花男の歌は、生きている。彼自身の生きた姿を綴った本を歌にしている。その歌の本に共鳴しながら、ずっと舞台を見つめていた。
太田家
トリを飾った太田家は、お馴染み「太田コール」が飛び交う『太田家』からライブをスタート。会場中の人たちを太田姓に染め上げた上で、披露したのがTHE BOOGIE JACKのヒライシュンタが曲を提供した『星明かりのメロディ』。まさに、青春という言葉の似合う、一緒にシンガロングしたくなる太田家らしい青春パンクナンバーだ。昔、青春パンクという言葉が流行った時代もあったらしい。そこに憧憬を重ねるのではなく、今を全力で真っ直ぐに生きる青春を自分たちが体現しているからこそ、太田家は堂々と青春パンクという言葉を掲げ、その言葉に相応しい、熱くて、真っ直ぐで、少し不器用な生き方を、力強い歌声とたくさんのキラキラ輝く音符に乗せて思いきり届けてきた。
「みんなの未来がもっともっと輝きますように」の言葉を合図に、太田家は『光れ』を演奏。とても強い意志と生きざまを、太田家は高揚し駆けるロックな演奏に乗せて伝えてゆく。エモい?確かにエモーショナルなビートパンクしている楽曲だ。でもそれ以上に、胸のど真ん中に強く掲げた意志を、高らかに空へ向かって響かせるように太田家は歌い演奏していた。夢想家?それでいいじゃない。夢があるから、いつまでだって青春という景色の中で輝けるのだから。
この空間に夏を連れ戻すように、太田家はザ・マスミサイルの高木芳基が曲を提供したブッ飛んだ青春ロックナンバーの『夏のイカれ野郎』を演奏。この曲も、一緒に声を張り上げシンガロングしたくなる楽曲だ。どの曲も、そう。太田家は熱い青春の景色の中へ一緒に飛び込み、共に螺子を外して騒ごうじゃないかと誘いかける。そこに、理屈も屁理屈もいらない。ただ素直に飛び込めば、自分もキラキラと輝く最高のイカれ野郎や乙女になって、無邪気な笑顔の花を顔いっぱいに咲かせていける。それで十分じゃないか。
ゲーム「SAMURAI MAIDEN」の応援ソングとして、今、積極的にライブで演奏しているのが『言ノ葉ニ咲ク』。妖艶で幽玄な世界へと誘う、とても神秘的なのに、胸をキュッと鳴らすオリエンタルな楽曲だ。サビでは、美しい花を咲かせるように華やかさも見せる。とても美しく、たおやかな曲なのも嬉しい。青春したパンクナンバーに乗せて騒ぐのも最高だが、歌や旋律にうっとり酔いしれるのも素敵なこと。しばし時間の概念を忘れ、身体と心を揺らしていた。
先の空気をつんざくように、GEEKSのエンドウ.が曲を提供した『赤赤』が飛び出した。激しく荒ぶる演奏が胸を赤赤と燃えさせる。太田彩華も、言葉を突きつけるように凛々しく歌う。気がついたらその姿へグーッと吸い込まれるよう、夢中になってその様を追いかけていた。
一人一人にテーマソングや日常の主題歌がある。一人一人が、自分の人生の中では紛れもなく主人公だ。そんな主人公たちの心を、少しでも音楽というテーマ曲でキラッと輝かせられたら。そんな思いも胸に誕生したのが、『シュプレヒコールが眠らない』。序盤から「Oi!Oi!」と共に声を上げる楽曲でありながら、1曲の中へ緩急つけた表情も描きだしてゆく。それはまるで、山あり谷ありの人生のよう。とてもメロウでエモい楽曲だ。揺れ動く感情の物語へ寄り添うように歌う太田彩華。彼女の歌声にいろんな音符の音色で彩りをつけてゆく演奏陣。胸を熱い高揚へと導き、一緒に声を上げたくなる。
楽曲は、キラキラした眩しい輝きを振りまくように明るく駆けだす。沸き立つ思いを熱く奮うように、太田家はエモーショナルな『夏影方程式』を届けてきた。言葉のひと言ひと言に込めた、燃えたぎる、終わらない青春という思い。フロアのあちこちで高く拳の突き上がる景色が素敵じゃないか。
最後に太田家は『愛とアストロノミア』を演奏し、これまで以上に眩しくエモい青春した景色をこの会場に描き出した。幾つになっても太田家のメンバーたちは、沸き立つ衝動へ導かれるままに思いをぶつけ続ける。太田たけちゃんの絶叫した熱い声を聴くたびに、胸が熱くなる。その声を心のパワーに、ときにシンガロングしながら、いつまでも、幾つになっても、共に気持ちを熱く燃やし青春を続けていたくなる。そう、ここにくれば、僕らは何時だって青春した自分になれる。終わることのない青春という言葉を思いきり肯定しながら、自分らしい自分になれる。だから、またここに集いたくなるのだろう。
アンコールで太田家が演奏したのが、花男が曲を提供した『ツアーは続く』。この日出演した仲間たちへの最大のリスペクトと感謝の気持ちを込め、それぞれの提供曲をセットリストに組み込むところが、太田家らしい。応援してくれるファンたち、太田家を支えてくれるミュージシャンやスタッフたち。そんな素敵な仲間たちと、太田家はこれからも音楽の人生という長いツアーを続けていく。そんな思いも伝えながら。またここから、次の新しいページをめくって物語を綴ろうと、太田家は思いを込めて『ツアーは続く』を歌い奏でながら、この日の仲間たちとの深い絆で結び合った宴のページを閉じて…いくわけがない。
最後の最後に、太田家はともうひと騒ぎしようと、『名もなき少年の 名もなき青春』を通し、フロア中に熱いクラップを起こし、太田たけちゃんや太田ひさおくんと一緒に「Oi!Oi!」と叫ぶ景色や、共にサビ歌をシンガロングしながら、消せない青春の景色を一人一人の心の中に熱く焼き付けていった。
太田家は、2023年4月に東京でワンマン公演を行う。そこへ向けて、どんなアクションを起こしてゆくのかも楽しみにしていようか。
PHOTO: 菊島明梨
TEXT:長澤智典
★インフォメーション★
太田家ワンマンライブ
「春のおおたまつり2023」
2023年4月19日(水)開場 18:30 / 開演 19:00
[会場]青山RiZM
チケットはこちら
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