2018.06.16
Soan プロジェクト NEWS
Soanプロジェクト生誕2年目の日に、「静」(Soanプロジェクト with 手鞠)と「動」(Soanプロジェクトwith 芥)、2つの姿を連続で提示。そして、新たなPhaseへSoanプロジェクトは進みだす。
      
6月1日、この日はサウンド・コンダクターSoanの誕生日であり、彼が2016年に立ち上げたSoan プロジェクト始動の日。彼は、2年前のその日より、毎年6月1日にSoan プロジェクト始まりの地である高田馬場AREAを舞台にライブを行ない続けてきた。
今年の6月1日も、高田馬場AREAを舞台に「Soanプロジェクト2nd Anniversary Oneman Live『ココロノコエ~Soan Birthday Special Live~』」と題し、Soanプロジェクト with 手鞠/Soanプロジェクト with 芥、2つの編成のもと、二部構成のライブを行った。


Soanプロジェクト with 手鞠

第一部を飾ったのは、Soan プロジェクト「静」の面を司るSoanプロジェクト with 手鞠。「君はまだ覚えているだろうか、帰るべきその場所を。君はまだ待っているだろうか、帰るべきその場所で。その暖かい温もりと安らぎを感じさせてくれないだろうか。どうそ、今日という日に生まれたことに惜しみない祝福と賛美を」
 美しくたおやかなヴァイオリンとアコギの音色、その上で静かに躍るピアノの旋律。Soanプロジェクト with 手鞠の宴は、ゆっくりと呼吸を始めるように『夕闇に鳴動する衝動と幸福の在処』から幕を開けた。言葉のひと言ひと言を絵筆に、Soanプロジェクト with 手鞠はこの空間へ夜の帳がゆっくり降り注ぐ風景を描き始めた。心がスーッと夕闇に惹かれてゆく。じっと呼吸を抑え、舞台から流れ出る調べをゆっくりと含みみながら、心を橙色に染めてゆく音のドロップを優しく口の中で転がしていた。

 「ようこそ、Soanプロジェクトです。歪にたわんだ愛情美や造形美…。そして、この問に答えておくれ…」
 空気をつんざくように響くアコギの旋律。手鞠が小さな叫びを上げると同時に、この空間は、遥か異国の地へと風景を様変えた。おおらかな、でも、強い意志と熱を持った演奏が、この空間へ芯の固い音の色を塗りたくる。たおやかさと情熱を交錯させ、少しずつ感情を解き放つ手鞠。『sign…-resonance-』。その歌の合図は、僕らを何処へ連れだそうとしているのか。たとえ何処の世界へ導こうと、胸に響くその旋律(声)が僕らをたぐり寄せる限り、安心して身を預けよう。

 「さぁ、僕たちと一緒に墜ちていくスリルを味わいましょう。この手でエスコートしましょう」。昂る感情を荒々しいドラムの音に投影しながら、観客たちへ心震える熱をSoanプロジェクト with 手鞠が注ぎだした。ほとばしる情熱を雄々しき演奏に乗せ、彼らは『落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と。』へ沸き上がる熱を込めてゆく。とてもスリリングで、心地好い緊張感を抱いた演奏だ。でも、その中へ温もりを覚えるのは、彼らが熱情を持って僕らを抱きしめてくれるから?!

「ようこそ、Soanプロジェクトの世界へ。この2年間、充実した環境の中で音楽が出来てとても嬉しいです。今日は心置きなく御本尊を祝福しようじゃないかと。最後は神に祈りを捧げようかくらいまで持っていこうかなと思っています」(手鞠)

 「すべてを同じ色に変えながら、陽はまさに地平へと消え入らんとする。そして夜の闇へと僕たちは逃げ込むように…」。
重い闇がこの世界を黒く塗り込めるように、舞台上からSoanプロジェクト with 手鞠は『黄昏色に融解する視界と屈折した類推(アナロジー)』を響かせた。その歌は、ゆっくりと僕らの手をたぐり寄せる。たぐり寄せた手を引き、暗い暗い奈落の淵へと引き寄せる。荘厳な弦楽(ヴァイオリン&二胡)とピアノの調べ、手鞠の歌声は、暗鬱な世界へ導く呼び水のよう。その甘い歌声と調べが呼ぶのなら、このまま墜ちてみたい。その先に待ち受ける景色に染まって観たい。

Soanの奏でる物悲しいピアノの音色。ゆっくりと揺れる音の玉たちが、何かを予見させる?!。咽び泣くように言葉をつぶやく手鞠。今にも壊れそうな感情へ、Sachiのヴァイオリンが命を目覚めさせるよう身をきしむ旋律を重ねだした。『投影された在りし日の肖像と云う名の亡霊』、それは、僕らを現実の世界から引き剥がし、触れてはいけない、無垢で、悲しくて、でも、痛々しいくらいにヒリヒリとした彼の地の棲み人へと変えてゆく。嘆き叫ぶ手鞠、その歌声へ重厚な調べを持って寄り添う演奏陣。僕らは、静かに荒れる音の喧騒の中、肌に痛みを覚えながら、その痛みを生きてる証に変え、黒い心の嗚咽と慟哭を身体中で浴びていた。

「あらかじめ決められた脚本のように、同じ演目を繰り返す。抗うことを許されない…すべては同じ神の概念の元に…」
この空間に濃淡で蒼い波紋を広げるように、生を抱いた音がゆったりと波打ちだす。込み上がる想いへ、ひと呼吸を置きながら気持ちをゆっくり注ぎ込む手鞠。なんて物悲しい、そのまま悲嘆の湖の中へ溺れそうな歌と演奏だろう。『それは呪いと同義語の魂の鎖 永遠に続く祝福と云う名のカルマ』が、僕らの魂へ太い鎖を絡ませては、行き場のない心をゆったりと引きずりだす。その歌と、その演奏が、僕らを大きな淵の底へと呑み込んでゆく。絡めた心の鎖を重しにしながら、ゆっくり墜ちてゆくように。それが、僕らの背負ったカルマだとあざ笑うように…。

「その熱を、息使いを、言葉を、今もすぐ側に感じるよ。忘れてしまわないように。今日という良き日にも、君の存在を感じる理由を…」
心に茜色の郷愁を塗り射すよう、『林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。』がゆっくりと朧な色を持って、この身を包みだした。舞台上から零れ落ちる幾つもの旋律と、胸をつかむ手鞠の歌声。落ちる調べは、触れた人たちを、懐かしいあの頃の風景へ連れだしてゆく。一人一人の心の中に浮かぶ郷愁という淡い絵。6人は、その絵を彩る存在へと僕らを揺り戻す。その哀しく嘆く声と音色は、時空を越え、求めたい懐かしさへと僕らを連れていく揺り籠のようだ。

ギターの弦やボディをスタッカートするタイゾ。剥きだした感情を演奏に叩きつけることで、この空間には、情熱的ながらも胸躍らせる興奮の前章が生まれていた。静寂の中へ狂気と狂喜を導くように響くSachiのヴァイオリン。やがて演奏は、スパニッシュな旋律を軸に据えた、触ると火傷しそうなほどに火照る歌声と演奏に身を変え、生を謳歌し始めた。誰かを憎んで 憎んでみたけれども…心の中に渦巻く嫌悪な感情さえも、滾る情熱抱いた演奏を通し燃やし尽くそうと、彼らは『感情を媒介として具象化する感傷の逝く宛』を雄々しく奏でゆく。沸き上がる昂揚を千切っては四方八方へ散らしながら、闇の中、6人は熱い情熱を燃やし、生きる今を謳歌していた。

荒々しい祐弥のアコギの音色の上で、手鞠が雄々しく神々しく歌声をほとばしらせる。なんて雄大な演奏だ。触れた人を鋭利な刃で切り裂くようなスリリングさを抱いた楽曲だ。でも、その熱を帯びた演奏へ触れずにいれない。その熱に火傷を負いながらも、呼吸をしていることをしっかり確かめずにいれない。『正否の相違、或いは利害の不一致』、なんて情熱の絵筆で魂へ生きる意味を書き与えてゆく歌だろう。「僕は君のように生きれない」。でも、彼らが張り裂けんばかりに生を躍動させるのなら、僕は、僕なりの生き方を示したい。

闇夜をつんざくように、そこへ光を降り注ぐよう、Soanプロジェクト with 手鞠は『醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る』を突き刺した。身体中に光の帯を背負い、研ぎ澄ました音を連ねるように、その演奏は力強く駆け続ける。その走る調べを僕らもしっかりとつかみ、一緒に熱狂の中へ飛び込もうじゃないか。Soanプロジェクト with 手鞠の中にある研いだ刃のような演奏に触発されたのなら、僕らも心の野生を開放し、手鞠と一緒に叫び狂えばいい。それが、心を解き放つという意味なのだから。

Soanプロジェクト with 手鞠の宴の最後にSoanは、この日のために書き下ろした『新曲: タイトル未定』をプレゼント。とても情熱ほとばしる、濁った魂を浄化し、一気に喧騒の宴へと連れだす楽曲だ。宴の中で踊り狂う様を、そのまま歌や演奏に投影。熱情が飛び跳ね、飛び散る。何時しか舞台上の彼らも、フロアーを埋めた観客たちも、心に野生を抱きながら、Soanプロジェクト with 手鞠が開いた晩餐会の中、心地好く宝飾した音たちに溺れ、心躍る味を貪っていた。

演奏が終わり、会場中に響いたたくさんの拍手。その心の熱狂をSoanプロジェクト with 手鞠は、続くSoanプロジェクトwith 芥へ手渡した。


【Soanプロジェクトwith手鞠 Member】
Produce・Music・Drums・Piano:Soan
Lyric・Vocal:手鞠
Acoustic Guitar:タイゾ
Acoustic Guitar・二胡・Chorus:祐弥
Violin:Sachi(from 黒色すみれ)